監査論〜分析的手続

2003年2月13日
1 まず監査手続は設定された監査要点ごとに選択・適用される。そして、この監査手続は?暫定評価手続?統制評価手続?実証手続で3つで構成されている。
 ここで、分析的手続とは財務情報を検討し、大局的に、重大な矛盾又は異常な変動がないかどうかを確かめる監査手続(推定値と財務情報とを比較することによって)をいう。
2 この分析的手続の有効性が成り立つための前提は、当該データ間に存在する合理的な関係が存続することが予測されることである(関連するデータ間に異常な変動がなければ)。
 ただし、?データ間に重大な矛盾又は異常な変動が認められない場合、?認められた場合、のどちらの場合でも虚偽表示に関して単純に結論づけることはできない。
 すなわち、?の場合でも「虚偽表示の隠蔽」「虚偽表示の相殺」等が考えられる。また?の場合でも、「営業上の変動」「事業内容の変化」「異常取引の発生」「会計方針の変更」等が考えられる。
 以下、分析的手続に関連する論点を検討する。
3 (1) リスクアプローチと分析的手続
 ?固有のリスクの評価(監査計画段階)
異常値の識別→固有リスクの存在を示唆→固有リスクの高い項目を識別
 ?発見リスクと分析的手続(監査実施段階)
 他の実証手続の適用範囲縮小。固有リスクと統制リスクの程度が低い→分析的手続を有効に使用可能。
 なお、分析的手続は財務データ相互間又は財務データ以外のデータと財務データとの間に存在する関係を利用して推定値を算出する。その際、推定値の精度は発見リスクの程度及び重要性の基準値に基づいて決定する。
 また、差異の調査を行うかどうかの基準値を設定しなければならないが、その際にも重要性の基準値に基づく。
4 (2) 監査証拠と分析的手続
 監査証拠とは、合理的な基礎を得るために入手したすべての情報である。会計データ及びそれを裏付ける情報から構成される。
 ここで、裏付け情報は?証憑書類、?監査手続によって入手した情報、?監査人が展開した情報等、である。
 分析的手続の推定値は?監査人が展開した情報であり、会計データをを裏付ける情報として、監査証拠となりうる(当然、?も含む)。
5 (3)十分かつ適切な監査証拠の入手との関係
 分析的手続は、?項目の抽出を伴わない監査証拠の入手方法、?特定項目抽出による試査における、特定項目として抽出されない項目に適用することができる。
 なぜなら、分析的手続は財務諸表全体、セグメント別財務諸表、すべての勘定と取引、に適用できる監査手続であるからである。
5(4) 意見表明と分析的手続
 まず、意見表明に当たって、監査上の重要性を考慮する必要があるが、その際、?未訂正の発見した虚偽表示の合計、?監査人が推定する虚偽表示の合計、に関して財務諸表全体にとっての重要性の判断を行う。
 この際、監査人が推定する虚偽表示とは具体的には、推定値を用いた分析的手続の重要な差異について調査したが、回答の合理性を確かめられなかった場合の重要な差異金額などである。
 また、財務諸表全体として総括的に検討する際に分析的手続を必ず実施しなければならない。
6 (5) 継続企業の前提との関係
 継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在するかどうかを確かめるために適用される監査手続としては?経営者とのディスカッション?分析的手続があげられる。
7 (6) 半期報告書、四半期報告書
 これらに含まれる財務諸表に対して年度監査に比して監査手続きの一部省略が認められる。
 ただし、分析的手続、質問および閲覧を中心とする監査手続は必ず実施しなければならない。
 保証水準の歯止め措置である。

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