自己株式〜商法、財務論、簿記、財表
2003年2月22日 自己株式について、4つの科目にまたがってまとめてみようと思う。
1 簿記での自己株式
簿記での自己株式を考えるにあたっては、(1)取得(2)処分(3)消却、の大きく3つに分けて考える必要がある。
(1) 取得(株主総会の決議)
注意点・・・取得にあたり支出した「付随費用」は営業外費用となる(ex支払手数料)
(2) 処分(取締役会の決議)
? 新株発行の手続を準用した処分
注意点・・・自己株式処分差益のときは問題ない。
自己株式処分差損のときは、
「自己株式処分差益」から控除
→控除できない場合
「資本金及び資本準備金減少差益」から減額
→さらに不足している場合
「当期未処分利益」から減額(なおこの場合P/Lの末尾に記載される)
? 株式交換及び吸収合併において自己株式を交付した場合
注意点・・・自己株式処分差益(差損が出る)
? 新株予約権の行使に伴う自己株式の交付
注意点・・・自己株式処分差益(差損が出る)
(3) 自己株式の消却
? その他資本剰余金を使用
→該当勘定科目を減少させる
? 当期末未処分利益を使用
注意点「自己株式消却額」勘定が出る(P/Lの末尾)
2 財務論での自己株式
自己株式取得・・・「株式の発行会社が、自社の発行済株式の一部を自らの資金で取得すること」
(1) 2つのタイプ
? 現金配当の代わり(分配可能な資金を保有)
? 一回限りのものとして大規模に行われる
(リストラクチャリング、資本構成の変更目的として、事業部や子会社の一部の売却資金、新規借入金などが財源)→ex持株会社
(2) 株価への影響
キーワード
?一株当たり利益
?株価収益率
?株価=自己資本÷発行済株式数
?特別配当
→?を根拠に株価は「下落」
⇔自己株式取得
→発行済株式数が減少→株価は下落しない。
結論・・・どちらも株主にとって同等(資本市場の完全性などの仮定が成立するなら)
しかし、企業にとっては自己株式取得が良い(株主価値の維持が可能だから)
(3) 実証研究
「自己株式取得は、市場が強いプラスの反応を示す」
? 買い付け価格>公表前株価
→応募株主有利、残存株主不利となり残存株主から応募株主への富の移動が発生。
なぜなら、1株当たりの価値が減少するから。
? 募集終了日後株価>公表前株価
→応募株主が有利になるだけでなはなく、既存株主にも富の配分がみられる
なぜなら、自己資本価値が増加しているから
※ 実証結果の根拠
?1株当たり利益上昇効果?最適資本構成達成手段・レバレッジ効果?株主にとっての節税効果?債権者からの富の移転効果?シグナル効果?乗っ取り防止効果?フリーキャッシュロー分配手段
結論・・・実証研究では、自己株式取得は高く評価され、株価を高める効果がある可能性
なお、経営者は3つの点に留意が必要
? 実際になんらかの効果が見込めることの確認
? 同じ効果を達成する、よりコストの安い他の手段の有無の検討
? 株主間の富の移動の発生に対する配慮
2 商法での自己株式(210条〜)
(1) 取得の弊害と対処
? 資本維持の原則に反するおそれ
→財源規制(ア総会時、イ買受時)
キーワード・・・
ア配当可能利益→例外、債権者保護手続289条
イ期末に資本の欠損のおそれ210条の2
? 株主平等の原則に反するおそれ
→手続規制(210条1項2号→特別決議→決議に際して議決権を行使不可204条の3の2第3項→他の株主にも売却の機会210条7項)
? 会社支配の公正を害するおそれ
→ア取得には決議イ処分には新株発行に準じた211条3項
? 株式取引の公正を害するおそれ
→証券取引法で対処
(2) 規制に違反した場合
→違反の程度等に着目→原則無効→善意の売主または相手方には主張不可
(3) 自己株式⇔子会社の有する親会社の株式
? 共通点
→議決権は否定されている(241条2項、3項)
さらに、議決権を前提とする権利も否定とされる。
? 相違点
→子会社は「別個独立の法人である点」
(4) 自己株式の法的地位
? 共益権
→明文規定は議決権
→しかし、会社自身が会社の経営に参画するという点で矛盾→それ以外の共益権も認められない
? 自益権
→明文規定は利益配当・中間配当(293条但書・293条の2第6項)
→しかし425条も否定
ただし、自己株式の財産的価値維持の観点
ア 株式分割による新株の交付および金銭の交付
→交付される新株=既存の株式の代替物→認めるべき
イ 新株引受権の「付与」
株主に新株引受権を付与する場合
→株価が下落するような場合は
→財産的価値維持を図る必要
→付与は認めるべき
しかし
→行使は原始取得になり不可
(5) 子会社の有する親会社の株式の法的地位
※ 原則として取得は禁止(211条の2)
しかし
→例外的に認められる場合あり(211条の2)
? 共益権
議決権は否定されている。
しかし
→別個独立の法人
→親会社以外の子会社株主および債権者保護の必要性
→それ例外は認めるべき
? 自益権
別個独立の法人
→子会社の財産を維持
→親会社以外の子会社の株主および子会社の債権者の利益保護の必要性
→最大限認めるべき
※ただし、株主割当による親会社株式の新株引受権については問題
→しかし、別個独立の法人
→「行使」も認めて良い
(→親会社株式の財産的価値を維持する必要性)
(→早期に処分なので弊害が少ないという許容性。211条の2第2項前段なお211条の3)
1 簿記での自己株式
簿記での自己株式を考えるにあたっては、(1)取得(2)処分(3)消却、の大きく3つに分けて考える必要がある。
(1) 取得(株主総会の決議)
注意点・・・取得にあたり支出した「付随費用」は営業外費用となる(ex支払手数料)
(2) 処分(取締役会の決議)
? 新株発行の手続を準用した処分
注意点・・・自己株式処分差益のときは問題ない。
自己株式処分差損のときは、
「自己株式処分差益」から控除
→控除できない場合
「資本金及び資本準備金減少差益」から減額
→さらに不足している場合
「当期未処分利益」から減額(なおこの場合P/Lの末尾に記載される)
? 株式交換及び吸収合併において自己株式を交付した場合
注意点・・・自己株式処分差益(差損が出る)
? 新株予約権の行使に伴う自己株式の交付
注意点・・・自己株式処分差益(差損が出る)
(3) 自己株式の消却
? その他資本剰余金を使用
→該当勘定科目を減少させる
? 当期末未処分利益を使用
注意点「自己株式消却額」勘定が出る(P/Lの末尾)
2 財務論での自己株式
自己株式取得・・・「株式の発行会社が、自社の発行済株式の一部を自らの資金で取得すること」
(1) 2つのタイプ
? 現金配当の代わり(分配可能な資金を保有)
? 一回限りのものとして大規模に行われる
(リストラクチャリング、資本構成の変更目的として、事業部や子会社の一部の売却資金、新規借入金などが財源)→ex持株会社
(2) 株価への影響
キーワード
?一株当たり利益
?株価収益率
?株価=自己資本÷発行済株式数
?特別配当
→?を根拠に株価は「下落」
⇔自己株式取得
→発行済株式数が減少→株価は下落しない。
結論・・・どちらも株主にとって同等(資本市場の完全性などの仮定が成立するなら)
しかし、企業にとっては自己株式取得が良い(株主価値の維持が可能だから)
(3) 実証研究
「自己株式取得は、市場が強いプラスの反応を示す」
? 買い付け価格>公表前株価
→応募株主有利、残存株主不利となり残存株主から応募株主への富の移動が発生。
なぜなら、1株当たりの価値が減少するから。
? 募集終了日後株価>公表前株価
→応募株主が有利になるだけでなはなく、既存株主にも富の配分がみられる
なぜなら、自己資本価値が増加しているから
※ 実証結果の根拠
?1株当たり利益上昇効果?最適資本構成達成手段・レバレッジ効果?株主にとっての節税効果?債権者からの富の移転効果?シグナル効果?乗っ取り防止効果?フリーキャッシュロー分配手段
結論・・・実証研究では、自己株式取得は高く評価され、株価を高める効果がある可能性
なお、経営者は3つの点に留意が必要
? 実際になんらかの効果が見込めることの確認
? 同じ効果を達成する、よりコストの安い他の手段の有無の検討
? 株主間の富の移動の発生に対する配慮
2 商法での自己株式(210条〜)
(1) 取得の弊害と対処
? 資本維持の原則に反するおそれ
→財源規制(ア総会時、イ買受時)
キーワード・・・
ア配当可能利益→例外、債権者保護手続289条
イ期末に資本の欠損のおそれ210条の2
? 株主平等の原則に反するおそれ
→手続規制(210条1項2号→特別決議→決議に際して議決権を行使不可204条の3の2第3項→他の株主にも売却の機会210条7項)
? 会社支配の公正を害するおそれ
→ア取得には決議イ処分には新株発行に準じた211条3項
? 株式取引の公正を害するおそれ
→証券取引法で対処
(2) 規制に違反した場合
→違反の程度等に着目→原則無効→善意の売主または相手方には主張不可
(3) 自己株式⇔子会社の有する親会社の株式
? 共通点
→議決権は否定されている(241条2項、3項)
さらに、議決権を前提とする権利も否定とされる。
? 相違点
→子会社は「別個独立の法人である点」
(4) 自己株式の法的地位
? 共益権
→明文規定は議決権
→しかし、会社自身が会社の経営に参画するという点で矛盾→それ以外の共益権も認められない
? 自益権
→明文規定は利益配当・中間配当(293条但書・293条の2第6項)
→しかし425条も否定
ただし、自己株式の財産的価値維持の観点
ア 株式分割による新株の交付および金銭の交付
→交付される新株=既存の株式の代替物→認めるべき
イ 新株引受権の「付与」
株主に新株引受権を付与する場合
→株価が下落するような場合は
→財産的価値維持を図る必要
→付与は認めるべき
しかし
→行使は原始取得になり不可
(5) 子会社の有する親会社の株式の法的地位
※ 原則として取得は禁止(211条の2)
しかし
→例外的に認められる場合あり(211条の2)
? 共益権
議決権は否定されている。
しかし
→別個独立の法人
→親会社以外の子会社株主および債権者保護の必要性
→それ例外は認めるべき
? 自益権
別個独立の法人
→子会社の財産を維持
→親会社以外の子会社の株主および子会社の債権者の利益保護の必要性
→最大限認めるべき
※ただし、株主割当による親会社株式の新株引受権については問題
→しかし、別個独立の法人
→「行使」も認めて良い
(→親会社株式の財産的価値を維持する必要性)
(→早期に処分なので弊害が少ないという許容性。211条の2第2項前段なお211条の3)
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